竹中銅器のホームページを見てお問い合わせをいただいたお客様の男性像修復の様子をご紹介します。
お電話でのお問い合わせをきっかけに画像をメールで送っていただき、お見積り後に修復の運びとなりました。
今回、修理のご依頼のあったのはビルに囲まれた公園に建立されていた男性像です。
本来ならまっすぐに腕を伸ばしているのですが、折れてしまっています。そのままの姿も痛ましく、ビニールが被せられています。
今回の修理のポイントは2点です。ひとつは、折れた腕を元通りにすること。もうひとつは、全体のサビも進んでいることから、全体の再塗装を行います。
損傷の度合いで、今回は当社の地元である高岡市まで持ち帰り、修理させていた だくことになりました。
運搬には負担の小さな大きさであり、修理に必要な溶接、研磨といった工程を行うには自社にて行うのが最も適切と判断したのがその理由です。
本体と台座を切り離します。グラインダーを使って、台座をグルリと切断していきます。
こうして台座と立像本体を分離し、4トントラックで当社の地元、高岡市へ運びました。
充分な強度をもたせるため、腕の中は径12mmのボルトを埋め込み、接合しています。また、溶接は銅に適した溶接を施しています。あらかじめ、オリジナルの腕の角度、位置をクライアントに確認していただいています。欠損や著しい傷みのある場合、クライアントとのこうしたやり取りが大切となります。
建立されてからの経年変化により、本体の塗装はかなり傷んだ状態でしたが、それよりも困った問題が起こりました。
建てられた当時、安定度を増すために足にはセメントが充填されていたようですが、
そのセメントによって、立像本体を台座に設置するためのボルトが外せなくなっていたのです。
通常、銅像を台座に固定する場合は、ボルトを使います。アンカーと呼んでいますが、船が錨(アンカー)を降ろして休息するように、銅像もこのアンカーで半永久的に固定されるのです。
男性像の左足部分。
建立当時、セメントを流し込むために空けられた穴。くるぶしよりやや上部分にありました。
足にセメントが詰まってしまっていて、このままでは設置固定ができないために、セメントを取り除く必要が生じました。そのため、クライアントに状況と理由をご説明し、いったん足部分を切断することにしました。
台座を切り離したときと同じく、グラインダーで足を切り離します。
これが足に埋められていたセメント。
ボルトと共にぎっしりと埋められていました。これでは抜けないわけです。このセメントを取り除き、古いボルトを取り外したあと、新たにボルトを取り付けることになります。
新しいボルトを足部分に入れ、溶接します。
ボルトを入れ、溶接をした後の状態。
仕上げにはいろんな要素を含んでいます。
全体をみながら、表面を磨いていくわけですが、その際にも、ヒビや割れがないかを確認しています。
また、オリジナルのタッチを損なわないように、削りすぎないことも大切。
仕上げの良し悪しによって、塗装したときの陰影や趣が変わるくらいに重要な工程です。今回は、塗装の下にサビがでていたため、全身のサビ落としも兼ねて、仕上げ直しました。
仕上げ後、着色を行います。屋内か屋外かで着色の仕方も変わりますが、今回は屋外のため、最終的にフッ素コーティングを施しています。色合いは、元の色の画像、色見本があれば、再現が容易なのですが、無い場合、比較的色味の残った部分から、オリジナルの色を判断し着色します。
完成した銅像を現地に運搬し、設置に取り掛かります。
台座にボルトを差し込むための穴を開け、そこに接着剤を流し込みます。
これが穴に入るボルト。台座に流し込んだ接着剤に固定され、銅像が固定されます。
取り外しから設置まで約1ヶ月。
腕部分の修復と全体の塗装を施し、クライアントにも満足していただける仕上がりとなりました。